
書評
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☆☆☆☆ |
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たまたま古本屋で見かけたので、萩尾望都「銀の三角」を買って読んでみました。学生の頃連載で読んでいるのですが、複雑なストーリに、内容がよくわから
なかった印象があります。いい機会なので改めて読んでみたところ、SFなのですが、歴史の雰囲気が漂っている作品でした。舞台は遠い未来なのですが、その
時点から数万年前の歴史の調査が行われたり、「歴史を変える」ことについての議論がなされていたり、また、「チグリスとユーフラテスの岸辺」という章が出
てきて、直接の舞台には一度も登場しないのですが、そこはかとはく、古代中近東の香りがするのです。 同様の印象を受ける作品として、これも古い作品ですが、佐藤史生「夢見る惑星」という作品があります。こちらは、超古代、ゴンドワナ大陸が分裂する前 の、数億年前の地球の話なのですが、作品の中に、古代中近東の香りがするところがあります。といっても中近東だけではなく、古代中南米の雰囲気もあって、 様々な地域・時代のエッセンスが含まれる混沌としたイメージなのですが、神聖王や、シーリーンという踊り子などに、どことなく、古代中近東の香りがするの です。 これとは対照的に、サーサーン朝をイメージして作られた架空の歴史ものである、「アルスラーン戦記」には、どちらかというと、イスラームの香りがして、 古代、という感じがしないから不思議です。パルティア〜サーサーン時代の中近東を描いたコミックは無く、これらのように、そこはかとなくイメージを与えて くれる作品がある程度なのが残念です。 ところで、先日言及した、フィルザバードのサーサーン朝時代の壁画の痕跡を見ていると、サーサーン朝滅亡時期の、ソグディアナの壁画や、 クーイ・カージャ遺跡のパルティア時代とされる壁画を見ていると、パルティア〜サーサーン朝の時代も、カラフルな装束に満ちていた、ということが、より明 確にイメージできるようになってきました。古代中国についても最近は、展示会でも、古代壁画や衣装(始皇帝兵馬俑で発見されたペイントされた兵士なども含 めて)が展示されるようになってきていて、紀元前後の古代世界も、色彩に満ちたカラフルな世界として、イメージできるようになってきました。そろそろ、直 接この時代と地域を描いた漫画がでてきてくれて欲しいと思うのです。 |
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石 田 衣良 (著) ☆☆☆☆ |
| 面白くスラスラ読めてしまいましたが、読みながら、この小説をどう捉
えていいのか、がつかみずい点がありました。それは、この小説が、社会派なのか、ファンタジーなのか、青春モノなのか、ということです。冒頭部分が神話
的・寓話的であるため、「アキバを舞台とした神話なのかな」と読み始めましたが、YUIさん・アキバ・オタクの描写のあたりで、社会派なのかな、と一瞬思
い、人物の掘り下げや、人間関係の複雑さに発展することなく、わかり易いキャラ達が、味方同士の諍いもなく、敵味方に整然と分かれ、粛々と役割をこなして
行く時点で、ゲーム的に思えました。しかし、仲間で作り上げたかけがえの無いものを汚い大人たちにを犯されたことに、報復に燃えるアキラに代表される、
「ひたむきさ」「純粋さ」には、思わずホロリとしてしまい、青春モノに通ずる感動がありました。 本書で描かれている「アキバ系」は、他の人の指摘と同様、やはり「よく取材はしているが、表面的」という感じです。普段アキバやオタクに縁の無い方が、 少しアキバを知る糸口にはなりますが、日曜日にアキバを散歩すればわかるようなことが殆どなので、その意味で、本書に登場するアキバは、あくまで「舞台」 に過ぎません。本書は、AI誕生を描いた「美しいキリスト教伝説」のようなものであるといえるでしょう。そこで、馳星周が描く歌舞伎町のように、その後の 後日但という形で、よりどろどろした人間関係や、リアルなアキバ系の生態を描く続編のようなものがあると、面白いかな、と思いました。 IT業界に関しても、作者はよく勉強していると思いましたが、あまりに短期間で簡単に成功しすぎる点や、問題のAIについて、イズム以外のメンバーが貢 献できることって何があるのだろう?とか。本質ではないにしても、技術的な間違いが散見される点になどに違和感がありました。とはいえ、本書でのITもま た、「舞台」に過ぎません。本書は良質な青春ファンタジーといえるでしょう。ついでに、読みながら、服部真澄「龍の契り」を思い出しました。 15/Oct/2006
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