近代欧州書籍書評


ガヴァネス(女家庭教師)―ヴィクトリア時代の「余った女」たち (中公新書) (新書) 川本 静子著 ☆☆☆☆☆


   
 ヴィクトリア朝や英国近代文学、フェミニズム運動などに詳しい方であれば、不足の多い書籍なのかも知れませんが、この時代については通史程度の知識しかな い私としては、聞いたことのない単語の書籍を図書館で見つけていきなり読んでみた感想としては、とても参考になり、面白い書籍でした。とはいえ、新書で出 した書籍の増補版「ガヴァネス―ヴィクトリア時代の〈余った女〉たち」を5倍の価格で出すのはいかがとは思いますが。

 前半のガヴァネス出現の歴史や19世紀の実態は非常に興味深く読めました。2点不足に思ったのは、この時代の「レディ」の定義が自明のものとさ れている点。読み進めるうちになんとなくわかりましたが、最初に「レディ」の定義の記載があれば、よりわかりやすかったと思います。もうひとつは、「余っ た女」の出現の背景が「当時の社会構造」にある、単純に断定してしまっているように思える点。社会史の本ではないので仕方がないかも知れませんが、安易に 「社会が悪い」とする思潮に通ずるものがあるように思え、もう少し掘り下げた方が説得力が出たものと思います。

 後半の文学に登場したガヴァネスは、「虚栄の市」「ジェーン・エア」など、名前しか知らなかった作品の歴史・社会的位置づけの解説となってお り、これも非常に参考になりました。本書に触発されて、他の18世紀英文学評論にも目を通してみたのですが、本書に出てくるレディ・イーストレイクのよう な指摘が無く、その点でも本書は参考になりました。ただ、3作目以降の紹介はいまひとつ意味がわかりませんでした。作品数を揃える為に無理やり並べたの か、ガヴァネスが文学における影響力が低下した、ということなのか。。。
 それにしても、副題は絶妙。「余った男女」の多い現代日本との比較があっても良かったかも。

19/Sep/2010