@腹膜播種とは
胃癌の転移にはリンパ節転移、血行性転移(肝・肺・骨など)、腹膜播種性転移があります。腹膜播種は主にがん細胞が胃の表面からこぼれ落ち、腹壁や横隔膜、腸管・腸間膜の表面などに接着・増殖したものですが、手術操作中にがん細胞の混じった血液やリンパ液が腹腔内にこぼれ落ちることによって再発がんとして腹膜播種になることもあります。
A腹膜播種の症状
腸管が外側から締め付けられて内腔が狭くなることにより、食べ物が通りにくくなり嘔気・嘔吐や腹痛、便通異常が出現します。肝臓で作られた胆汁の腸管への流れが途絶え、閉塞性黄疸となる場合もあります。播種が腹膜の背中側へ及んだ場合は、腎臓から膀胱への尿の通り道である尿管が閉塞して水腎症となり腎不全に陥ることがあります。また、腹水が大量に貯留することも多く、腹水を吸引・排泄しても再び溜まり、腹部膨満感や緊張痛が出現します。
B 腹膜播種の治療
従来から、5FUの持続点滴静注療法やメソトレキセート・5FU交代療法が内科的治療としておこなわれてきました。どちらの治療法が優れているのかを、JCOG(日本がん臨床試験グループ)の消化器内科グループが多施設によるフェースV試験として現在進行中です。
また、腹膜播種にきわめて有効であると考えられているタキサン系抗がん剤の1つであるタキソールの少量分割投与法と先に述べた5FUをもちいた治療法のどちらが本当に優れているのかを比較するフェースU試験も開始されました。
これらの注射薬をもちいた治療法のほかに、ティーエスワンという内服薬でありながら胃癌に対して効果の高いくすりが登場し、癌性腹水が消失したり腹膜播種による腸閉塞が改善したりすることが報告されています。
外科的治療法としては、腹膜播種があっても胃切除だけはおこなう場合や腹膜播種を含めたすべての腹膜を切除してしまうペリトネクトミーといったきわめて侵襲の大きな手術まで様々です。また、腫瘍は切除しないで食べ物の通り道を確保するためのバイパス術などの緩和手術もおこないます。これらの外科的治療に加え、高濃度の抗がん剤を腹腔内に直接投与して腹膜播種をなおそうとする腹腔内化学療法も以前からなされてきました。マイトマイシンCやシスプラチン、5FUなどの投与や、それらの抗がん剤と温熱療法を組み合わせた温熱化学療法がありますが、いずれも単施設での成績でありその効果も一定しません。以前JCOGの胃外科グループでおこなわれたシスプラチンの腹腔内投与の有無による生存率の比較では腹腔内化学療法による治療効果を証明できませんでした。しかしながら、タキサン系抗がん剤(タキソール・タキソテール)の腹腔内投与により腹膜播種が縮小・消失したという報告が複数の施設から報告されるようになったため、多施設で診断法、治療法、効果判定法を統一してその安全性や有効性を評価する臨床試験をおこなうことになりました。
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