24      香椎造り

           香椎宮本殿 (国の重要文化財指定) 

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 香椎宮は神亀元年(724)、奈良朝廷の意向を受け創建されました。神功皇后の霊を祀る「廟」として建てられたため、その本殿は他の神社とは異なった「香椎造り」と呼ばれる日本唯一無二の建築様式を今に伝えています。社殿は何度か焼失しましたが、現本殿は亨和元年(1801)福岡藩十代藩主黒田斉清(くろだなりきよ)により、古代から伝えられてきた「香椎造り」を基に再建されたものです。大正14年(1925)国の重要文化財に指定されました。

 

 

 

 香椎宮社殿は、我々が参拝する拝殿(はいでん)、その奥に勅使参拝の時に幣帛(へいはく)を捧げる幣殿(へいでん)、そしてその奥に本殿が築かれています。拝殿、幣殿は近くから写真が撮れるのですが、本殿は透塀(すきべい)で囲まれている為、通常は中に入れません。

日本唯一の建築様式、この説明が難しいのであります。香椎宮本殿建築様式の説明には、建物の造り(屋根の造り)と破風(はふ)についての基礎知識が必要になります。破風とは「風を破る」、つまり屋根を風雨から守る意味からきているのでしょうが、一般的には屋根が作り出す建築造形の一つだとされています。うっちゃんも素人勉強の範囲ですが、説明に挑戦してみます。

それでは説明を進めていきましょう。図の造りを「切妻造り」(きりつまつくり)と言います。昭和時代の民家の一般的な造りです。神社の9割以上が「切妻造り」です。赤色の所(本を開いて伏せたような姿・造形)を破風(はふ)と言います。切妻造りの破風を「切妻破風」(きりつまはふ)と呼びます。図の造りは「寄棟造り」(よせむねつくり)です。現在の民家で一番よく見かける造りです。「神社の屋根を寄棟造りにしない」が日本の神社建築様式の共通する特色です。逆に言うと、日本の中に「寄棟造り」の神社は一つもありません。ところが、香椎宮はそのルールを少し冒しています。  「寄棟造り」の場合には三角形の「破風」が現れません。

               切妻造り

 

               寄棟造り

 

 

 

 

 

 

               入母屋造り

 図は/泙痢崟攤並い蝓廚鉢⊃泙痢峇鹽鐶い蝓廚鮃臑里気擦燭發里如◆崙母屋造り」(いりもやつくり)と言います。青色線のように破風が出来ています。しかし三角形の底辺から更に「寄棟造り」の屋根が続いています。この場合の三角形の造形を「入母屋破風」(いりもやはふ)と呼びます。図の青色部分が「入母屋破風」です。「香椎造り」は、このの「入母屋造り」が基本となっています。寄棟造りを少し取り入れているのです。矢印の方向が本殿正面と例えて下さい。屋根の棟と平行な面を「平」(ひら)といい、棟と直角な面を「妻」(つま)といいます。建物のいずれの面を正面入り口にするかによっても「妻入り」と「平入り」に分類されます。香椎宮は「平」側を正面入り口にした「平入り神殿」になります。

 

 

 

 「香椎造り」はここからが複雑なのです。前の段階で「入母屋破風」(いりもやはふ)が確認出来ました。次は「千鳥破風」(ちどりはふ)。「本殿正面図」の屋根の中央部に三角形の屋根(黄色部分)がついています。これが「千鳥破風」です。「切妻破風」(きりつまはふ)と同じに見えるのですが、何処が違うのでしょう?良く見比べてください。この「千鳥破風」は建物(入母屋造り)の重要な構造(棟)とは全く関連していないことが分かります。また「切妻破風」には三角形の底辺の線が現れませんが、「千鳥破風」には底辺が確認できます。一言でいうと、屋根の斜面に取り付けた「飾り」と言っても良いと思います。の黄色線の部分。飾りとは言いましたが、香椎宮の「千鳥破風」は大きい窓があり、採光や換気には役立っています。

城郭建築では天守閣に良く見ることが出来ます。右の「姫路城天守閣」の写真をみてください。黄色の部分が「千鳥破風」です。この千鳥破風が付いているとカッコ良く見えるのです。姫路城に限らず、多くの城(天守閣)で「千鳥破風」を確認することが出来ます。香椎宮の「千鳥破風」の屋根棟は本体入母屋造りの屋根棟と同じ高さになるほど巨大なもので、特別に「大千鳥破風」と呼ばれています。

 

 

            本殿 正面図

 

              本殿 側面図

 

 

 

 

                         今までのまとめを下記の図で確認して下さい。

 

 

 ここからはより複雑になっていきます。通常の神社本殿は大きな「楼門」と同じで、三間(さんげん)構造が基本になっています。でも実は、香椎宮は五間(ごげん)構造になっているのです。つまり三間の両側に更に「獅子間」と呼ばれる「間」が、正面手前だけに翼状に張り出しているのです。の写真、正面図、側面図でいうと、白色の○が付いた部分です。この両側の間は「切妻造り」の建物で本体と連結されています。よってこの両側に張り出した屋根の「破風」は「切妻破風」(きりつまはふ)です。本殿写真、正面図、側面図の赤線の部分です。

皆さん、既に「破風(はふ)」で混乱していませんか?。 説明しているうっちゃんも混乱しているのですから・・・。「破風」とは一言でいうと、「切妻造りや入母屋造りの妻側にできる三角形の造形、それと本体屋根の斜面に付けた装飾用屋根がつくる三角形の造形」だと思って下さい。                                                                            

 しかし香椎宮の「破風」はこれで終わりではないのです。香椎宮本殿の中央出入り口には石段があり、その上部に張り出した(ひさし)が設けられています。また左右両側に伸びた切妻造りの「獅子間」にも出入り口用の階段があり、その上部にも張り出した(ひさし)が確認できます。これらも破風(破風板)の一種で、「縋破風」(すがるはふ)と呼びます。の緑色の部分です。構造は本来の雨風を防ぐ破風板です。もう複雑すぎて大混乱ですね。でも「破風」はこれでやっと終りです。

 

 

 本殿 右側斜めから撮影

 車寄せ(本殿左側)

 

 

最後に香椎宮本殿の大切な説明が残っています。両側にある「獅子間」の出入り口用階段のことです。実はこの階段、途中で切れているのです。(本殿正面図、側面図および写真を参照)。これを「車寄せ」といいます。これは御祭神が御輿(みこし)や牛車にて出入りする時、階段の途中から直接乗り降り出来るように造られたものです。珍しい造りです。ちなみに御神幸祭の時、御祭神が乗られた神輿は正面右側の「車寄せ」から出発され、左側の「車寄せ」にお帰りになられます。

 

 

                                                                                  如何でしたか?この尋常でない特異な複雑さ。日本唯一になる筈ですよね。「香椎造り」を紹介した多くの説明文章があまりにも解かり辛かったので、うっちゃんが挑戦したのですがどうでしたか。やっぱり解かり辛いですよね。宮大工の専門家に来て頂いて説明してほしい。でも、そうするともっと混乱して、ますます解らなくなるかも。

 

神社建築様式に共通する特色

_虻を寄棟造りにしない

瓦や土壁を用いない (桧皮葺・板壁)

床を高く張る

 

神社建築様式の主な種類

神明造り  切妻・平入り       伊勢神宮

流れ造り  神明造りの発展型   全国の7割の神社

大社造り  切妻・妻入り       出雲大社

春日造り  切妻・妻入り       春日大社

八幡造り  切妻・平入り       宇佐神宮

住吉造り  切妻・妻入り       住吉神社

香椎造り  入母屋・平入り      香椎宮

 

* 写真・図中では「破風(はふ)」部分を分かりやすくする為に、色別に描いています。「切妻破風」「入母屋破風」「千鳥破風」「縋破風」です。

 

●参考にさせていただいた資料

香椎東校区記念誌 (正面図・側面図は記念誌から転用)

歴史散歩事典(井上光貞 監修)

三歩会「香椎地区歴史ガイドブック」

H・P 「福岡市の文化財」

H・P 「ウィキペディア」、「ヤフー百科事典」、ほか多数。

 (お詫び) 「造りと破風のまとめ」として載せている図はとても解りやすく、あるH・Pから転載したものですが、どのH・Pだったのか分からなくなってしまいました。ご了解、ご紹介無しで使用させていただいています。申し訳ありません。(2014年3月)

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