第6回
激震、火星の海

 2人と1匹の乗った流星号は光の渦を抜け目的地へと到着した。
 画面いっぱいの青。そこは豪華絢爛な火星の海。サイは海はどの世界でも変わらず美しいと思った。
 青い宇宙に浮いている様な不思議な感覚。今はまだ静まりかえっている。

「相対位置算出。ネットリンク確認。…全て問題無し。」

 トポロジーレーダーに次々と青い三角形が表示されていく。画面を覆うような青。その数36+1。護衛目標夜明けの船はその名を現すかのように一際輝いていた。
 対する赤の敵根源種族艦隊の数は20。事前情報の半分の戦力であり、数の上ではにゃんにゃん共和国が有利と言えたが、それでも数値化した場合の彼我戦力差はおよそ30万:13万。根本的に戦力の足りていない絶望的な状況である事に違いは無かった。
 …しかし、何時の時代だって電子の世界では正義は青と共にあると相場が決まっている。それは何の理屈も無く、不幸を悲しんで、笑顔を願う希望の色。それは火星の海に伝わる伝説でもある。伝説の妖精なら、単身100を越す敵だって倒してみせるだろう。
 そして、今ここに存在する者達は伝説の妖精に他ならなかった。ならば、負ける道理など在りはしない。ここに集った全てのものが一騎当千、そうあるはずなのだから。

「開戦信号受信…始まるぞ。」
「…いよいよか。」
「ええ」

 サイ、緊張の表情で操縦桿を握り締める。
 作戦案は陽動&奇襲とそれに乗じた中央突破である。彼等の配置はその中の奇襲突入部隊だった。陽動部隊が敵を引き付けた時に突入して、横っ面を殴る役割である。

「射程突入まで後10…5、4、3、2、1。護衛部隊魚雷発射。」
 レーダーに凄まじい数の魚雷が表示され、見る見るうちに敵に向かって収束して行く。
「着弾確認…白兵部隊突入を開始。」
 双方から伸びた三角形が交差し、すれ違う。
 2機の仲間が消えた。劉輝国の猫はゴッドスピード…静かに心の中で祈った。
 そのまま残りの部隊は敵艦隊中央に突入、巧みに敵の射角を避け、敵を盾にし、敵に被害を与えだした。

「突撃信号受信!」
「了解!出力戦闘機動!シールド展開!」
 フィーブルのかけ声と共に甲高いタービン音が強くなる。
「サイさん行って下さい!!」
「おうよっ!」

 凄まじい轟音をたてて機体が上昇を開始する。水中とは思えないようなGが身体にかかる。
 次々と突撃を開始する各国の機体。

「魚雷行きます!」

 Gに耐えながら、照準を合わせ、魚雷を発射するフィーブル。
 奇襲部隊から放たれた無数の魚雷が敵艦に突き刺さり、轟沈。
 更にそれを追うように突入。白兵部隊に気を取られた根源種族艦隊の腹を抉る様に戦果を拡張し始める。
 だが、敵も黙っている訳が無い。回避運動を取りながら、迎撃行動を開始する。

「うぉあ!? なんだよこの弾幕!? 洒落になってねぇ!?
 レーダーとかどう見るんだよ!? つうか、感だな!? そう言ってるんだな!?」
 次々と飛来する魚雷やら機雷やら何やらを紙一重で避けながら、サイ。

「シールドは絶対に貫通されません!いざとなったら防御してください!
 それとこの機体はシールドが左にしかありませんので、右の回避力はありません!左タ
 ーンを使って…うわぁ!?」
「OKOK!」

 分かってるのか分かってないのか微妙な返事をしながらも円を描く様にターン、更にシールドを左に向ける。一気に左前方へ加速を開始する流星号。
 Sカトラスを抜刀。すれ違い様に一閃。だが、浅い。

「ちっ! 得物が短いんだよ! 槍とか無いの槍とか!?」
「無い。」
 冷静に即答する劉輝国の猫。

「なら…ぶつけてやるぜ!」
「え…!? くぅ!?」
 シールドを正面に直して180度ターン。螺旋を描いて全力突撃を開始する流星号。
「うわわわわ!!」
 シールドアタックがヒット。視界が一瞬閉ざされすぐさま抜ける。
「見たか!風穴開けてやったぜ!」
「す、凄い!」
「いや、まだだ!」

 既に轟沈気分の2名。だが、それが甘かった。まだ、敵艦は稼動していたのだ。
 後方から発射される魚雷。更に巨体で、突撃をかけて来る。

「ちぃ…しぶといんだよ、デカブツが!」
 徐々に接近してくる魚雷。
「うわぁぁーっ!!」

 背面に直撃…するかと思われたその時、高速で突入してきたRBがシールド防御で魚雷を撃破。
 まるでコートを着込んだような重装甲が特徴的な特殊チューンの機体だった。
 更に前からもう一機のRBがすれ違う様に敵艦に突撃、迫り来る魚雷を華麗に切り捨てていく。フィーブル藩国仕様の流星号と対照的に武者を髣髴とさせる外装。
 自由戦士の圭児とASだった。2機は連携行動を取り、そのまま敵艦にシールド突撃をかける。ASのシールド突撃が敵艦を貫いた。そして、まだ稼動を続ける敵艦に対して、上方から旋回してきた圭児が止めの一撃。轟沈。
 サイ達の危機を救った自由戦士達は礼を言う暇すら無く颯爽と去って行った。

「………た、助かった…」
「…か、かっこえぇ!」
 へにょへにょと崩折れるフィーブルと目を輝かせるサイ。
「…まだ、戦闘は終わっていない。」
 内心どきどきの劉輝国の猫士がそんな2人を嗜める。

「ああ、そうだな! あの2機に続くぜ!! 突撃!!」

 彼等は一歩遅れて自由戦士に続き、次の目標へと接近を開始するのだった。

 回廊突破作戦:戦闘結果 勝利


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