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ベイズ統計

ベイズ統計(Bayesian Statistics)は、 既知の事象の知識を使って、観測できない確率を計算してしまう手法です。 計算のよりどころは、ベイズの定理です。

ベイズの定理

ベイズの定理は、
P(A|B)=P(B|A) P(A) / P(B)
と書かれます。
P(A)が事前確率、P(A|B)が事後確率と呼ばれます。

この定理を繰り返し使うことで、連鎖的な確率を次々に求めることができます。

ベイズ更新

新しいデータが得られると、確率の値を更新できます。 これをベイズ更新と言います。

ベイジアンネットワーク

確率の関係がネットワーク状の構造を持っている時が、 ベイジアンネットワーク です。

ベイズ統計

上記のベイズの定理に対して、
P(A|B)とP(A)  ⇒ 「確率分布」
P(B|A) ⇒ 「尤度」
P(B) ⇒ 「定数」
、としているのが、「ベイズ統計」と呼ばれる統計学の分野です。

「尤度」は、手持ちのデータでわかる部分です。 「事前分布」は主観的に与える部分です。 「定数」になるのは、全部の確率を足すと、規格化ができると考えるためです。

これによって、「主観をデータで修正した分布を、事後分布として得られる。」 、と考えることが可能になります。

主観確率

ベイズ統計は主観確率を有効に使う理論です。 ところが、「観測していないことを前提にすることは、科学として認められない。」という立場の人にとっては、 主観確率は認められない概念です。 ベイズの定理は、200年前の理論ですが、統計学の専門家の間では長い間論争があり、 支持しない立場をとる方もいます。 科学というよりも、哲学的な論争です。

ところで、立場どうこうの前に、現実の世界では主観確率は重要です。 信頼性工学のFMEAやFTA のように、主観確率を積極的に使っているものもあります。 未知(未観測)の現象に挑戦していくのに、主観(経験)が役に立っています。

現在は、インターネットの技術としても重宝されています。

これは、哲学よりも、実学の方が先に進んでいる事例です。

環境と品質のための統計学

環境は、多様であることが重要な分野です。

また、現在のモノづくりのあり方は、多品種少量生産が主体になってきていますので、 多様であることが重要です。

多様なものを扱う分野では、一様であることを前提にして、 「一様性」を調べるような伝統的な統計学は、必ずしも適切ではありません。 筆者は、環境と品質のための統計学では、ベイズ統計も役に立つと思っています。 特に、「階層ベイズ法」は、ニーズにぴったり合うのではないかと。。。



参考文献

「史上最強図解 これならわかる!ベイズ統計学」  涌井良幸・涌井貞美 著 ナツメ社 2012
ベイズ統計の考え方を、漫画や図解をたくさん使いながら丁寧に説明しています。 同じ著者の下記の本と比べると、Excelでの計算例は引かれています。


道具としてのベイズ統計」 涌井良幸 著 日本実業出版社 2009
ベイズの定理に、確率密度関数や尤度という考え方を入れるプロセスが丁寧に説明されています。 つまり、統計学や微積分に不慣れな人に親切です。 多くの話題を扱っている訳ではないですが、 MCMC法 や、階層ベイズ法等の重要な項目について、見通しの良い解説をしています。


Excelでスッキリわかる統計入門」 涌井良幸・涌井貞美 著 日本実業出版社 2010
「道具としてのベイズ統計」よりも入門的な内容に限定されていますが、 さらに整った形にまとめられています。 例題に取り組むことを繰り返して、段階的にベイズ統計の考え方に入っていくようになっています。 Excelで計算する流れも具体的に書かれています。


入門ベイズ統計−意思決定の理論と発展」 松原望 著 東京図書 2008
ベイズの定理の基本を述べた後に、応用への入門として、 意思決定・パターン認識・回帰モデル・カルマンフィルター・医学・信頼性工学・画像処理・ベイジアンネットワークを、 つまみ食いします。


ベイズ統計と統計物理」 伊庭幸人 著 岩波書店 2003
統計物理学(イジングモデル等)を勉強した方限定ですが、 この本はベイズ統計学の入門書になると思います。 遺伝学・氷・磁性体・画像修復が、同じ本の中で書かれている点でも面白い本です。 統計物理学のマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)が、 ベイズ統計に使われているのは、アナロジーがあるからだそうです。
著者の修士論文は、氷がテーマとのことでした。 くしくも筆者も氷を修士論文で扱ったので、たのしく読ませていただきました。 筆者は「セラミックか。氷か。」、で迷っていた時に、 「万物の根源は水」という指導教官の一言で氷を選びました。 「氷は身近な物質なので、今さら調べることなんてないのでは?」、 と思う方もいらっしゃると思いますが、 そうでもないです。


ベイズ統計の理論と方法」  渡辺澄夫 著 コロナ社 2012
スッキリ書かれているようには思うのですが、数学ならではの書き方に慣れていない方(筆者がそうですが)には難解な本です。 相転移 も出て来るので、面白い本だと思うのですが、、、

ベイズ統計学とその応用」 鈴木雪夫・国友直人 編 東京大学出版会 1989
意思決定の話や、主観確率や事前確率についての論考があります。 難しい本です。


ベイズ統計学入門」 渡部洋 著 福村出版 1999
分布・平均・回帰等について、すべてベイズ推測という視点で書いてあります。 分布・平均・回帰等の統計学を、よく知っている人にとっての、「入門書」になっています。


「理工基礎 確率とその応用」 逆瀬川浩孝 著 サイエンス社 2004
確率で使う道具を順に解説していて、 条件付き確率のところでベイズの定理が出てきます。



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